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園長の「給田だより」(2018年3月号)

2018/03/05 8:35:23

涙は、平(ピョン)昌(チャン)だけじゃない!

六角ホールの壁の真新しい3枚の賞状は、1月21日(日)、こどもの国(横浜)サッカー場での2018年カワイサッカー大会で、佼成学園幼稚園の子どもたちが頑張った証(あかし)です。「年長の部」は惜しくも準優勝、「年中の部」はA・B両チームがワンツーフィニッシュでした。この大会は、心温まるエピソードを二つ、私に与えてくれました。

一つ目は、「金子先生の涙」。佼成サッカー教室の金子徹先生は、大会終了後のミーティングで、ラストゲームを終えた年長組に、次のお話を…。   

みんなの学年は、去年の年長組や今年の年中組と違って、最初から人数が少なく、試合ができるギリギリの数。チーム形式の練習ができず、まともにサッカーができる状態ではなかった。そんな中でも、今日まで誰一人欠けることなく、「優勝しよう!」という気持ちで頑張ってきた。「せめて1勝を」と思っていたが、今日は1勝どころか2勝もして、準優勝することができた…。

そう話す声は震(ふる)え、涙を拭(ぬぐ)う金子先生。保護者たちは、ついもらい泣き。子どもたちの頑張りはもちろんのこと、先生の子どもたちへの思いの深さを知り、一所懸命指導してくださったことへの感謝の気持ちが込み上げてきた、とのこと。子どもたちも座って、じっと先生のお話に聴き入り、先生の思いをしっかりと受け止めていました。「佼成のみんなが頑張ったから…、先生は嬉しくて泣いたんだ。嬉しい時の涙は、“嬉し涙”って言うんだよ」、ある子どもの言葉です。ノンフィクション作家の柳田邦男氏は某著書で、「語る内容に強く共感した瞬間のことや、演奏に激しく心を揺さぶられた瞬間のことは、心にしっかりと刻まれて、いつまでも記憶に新しい。そのことを、私は『瞬間の永遠性』という言葉でとらえ、大事な考え方にしている」と述べています。先生が熱心に教えてくださったことや、自分たちへの温かい心を、子どもたちは決して忘れることはないでしょう。

後日談があります。冬の大会の「年長の部」優勝チームは、埼玉、千葉、神奈川、東京の代表による関東大会に進めることになっていて、もちろん準優勝の佼成は、関東大会に進めません。ところが、頑張った子どもたちに、何と、仏さまからのご褒美が!優勝園は2月25日(日)の大会当日に行事が予定されていて、関東大会に出場できないとのこと。そこで、準優勝園に出場の話が舞いこんできたのです。子どもたち、保護者は大喜び。後日、優勝園の日程調整により、最終的には、東京代表が2チームという前代未聞の関東大会になったのです。子どもたちの努力、保護者の願い、先生の深い思いが相まっての不思議な「お・は・か・ら・い」に、有難く合掌です。連日平(ぴょん)昌(ちゃん)から、嬉し涙や悔し涙のレポートが茶の間に届いていますが、涙は平昌だけにあるのではありません。大いに心動かされた、“佼成の涙”でした。

二つ目は、年中組保護者の手記が伝える、「一本のプレシャス・ゴォ‐‐‐‐ル!」です。

息子のチームは、1試合目は引き分け、2試合目は2-1で初勝利、3試合目は0-1で負けてしまい、残念なことに準優勝でしたが、2試合目に息子が ゴールを決めてくれました。いつもはマイペースなのですが、ゴールを決めた瞬間の嬉しそうな息子を見て、私は胸がいっぱいになりました。帰宅しても興奮は冷めやらず、本人にとって凄く良い経験になりました。一方、私の方は、試合を通して、息子に対する思いの間違いに気づき、恥ずかしさを感じる一日になったのです。大人しい性格、水泳が苦手、テストになかなか合格できない息子を、私はずっと「運動系は苦手な子」と見ていました。そして、テストがあるたびに前に進めない息子に、「次は頑張ってね」と言い続けていたのです。ゴールを決めたとき、「見てたぁ?」と言って、息子は私のところに駆け寄ってきました。その瞬間、ハッとしました。私は息子にプレッシャーをかけ過ぎすぎていたのではないか、と。息子は、私の「頑張って」を望んでいなかったのです。息子の雄姿は、「もう少し子どもを信じてあげよう。できないことがあっても、見守っていこう」という思いにさせてくれました。成功と失敗を繰り返しながら成長していく息子。今後も、経験とチャレンジを大切にしてほしい、と願っています。

子育てにおける古くて新しい言葉、それは「育児(いくじ)は育(いく)自(じ)」。子どもの姿を通して、親としての自分自身を振り返り、人間的に成長していくことを意味しています。単なる語呂合わせではなく、永遠の真理です。一本のゴールを、親子関係を見直す貴重なチャンスと受け止められた保護者としての真摯な姿勢に、心から敬意を表します。松森憲二拝

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