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園長の「給田だより」(2014年12月号)

2014/12/01 7:16:29

「マナーに関する一考察」  ~共に育てましょう、共に育ちましょう

 10月28日(火)に、今年度2回目の園運営協議会を開催いたしました。佼成学園創立60周年のテーマ「もうワンランク上を目指して」を踏まえて、トークテーマは「佼成に必要な“もうワンランク上”とは何?」でしたが、恒例のフリートークをとおして、多くの貴重な ご示唆をいただきました。詳細は別の機会に譲るとして、重要ポイントの一つとして「もうワンランク上の“保護者のマナー”」をあげてくださったことに、私は驚きをもって耳を傾けました。というのも、園長に就任して3年、直面する課題に一つひとつ取り組んできたつもりではありますが、今もって未解決なのが、園周辺の交通 マナー、バス停での園児や保護者の振る舞いのこと等、園内での保育以外のことだからです。

マナーのことについてあれこれ思いを巡らせるとき、いつも私の脳裏をかすめる一文があります。それは、 一世紀を優に越える明治時代のものなのですが、私は、時代を超越する大切なメッセージとして、いつも心に 温めています。その文に出会ったのは、私が30代の後半、前任の専門学校の設立準備事務局で、新しい理想の学園づくりに邁進していた頃のことでした。

その一文とは…。女子英学塾(のちの津田塾大学)を創設した津田梅子女史が、1900(明治33)年9月14日の開校式で述べた挨拶の一部です。開塾の理由や目的、そして抱負などを述べた後、「最後に二、三の御注意を申します」と言って、梅子女史は、つぎのように述べているのです。(下線は松森による。)

「この塾は女子に専門教育を与える最初の学校であります。従って世間の目にもつき易くいろいろの点で批評を受けることでございましょう。一体世間の批評などは、さほど重要なものではありますまいが、もしかような批評が幾分でも、女子高等教育の進歩を妨げるならば、誠に遺憾なことであります。しかもその批評の多くは、学校で教える課程や教授の方法について彼是いうのではありません。ほんの些細なことを、例えば日常の言葉遣いとか他人との交際ぶりとか礼儀作法とか服装とか――かような細かいことを批評して、全体の価値を定めようとします。それ故細かいことではありますが、こういう点にも十分注意して、下らない世間の批評に上らないように気をつけていただきたいと思います。

出典:『津田梅子』(吉川利一著、中央公論社)                                              

「下らない世間の批評」とは、いささか過激な表現とは思いながらも、梅子女史が言わんとする趣旨に得心したときのことを、今でも鮮明に憶えております。

「日本一の幼児体育園」や「日本一の運動会」といったスローガンを掲げ、その目標に向けて一心不乱に努力し、周囲の方々から評価を得、その結果、多くの子どもたちが入園してくれたとしても、例えば、わずかな時間の違法駐車、バス停での園児や保護者の大騒ぎなどで、「あのK幼稚園は…」「K幼稚園の親たちは…」と噂され、たちまち園の評判は悪くなってしまいます。「口コミの怖さ」ですよね。とかく悪口というものは、あっという間に広まり、長く語り継がれてしまいがちです。  

幼稚園教育の主役は、言うまでもなく園児です。しかし、幼稚園ほど保護者の存在が大きなウエイトを占める教育機関は、他にないと思います。保護者は、限りなく主役に近い準主役であり、「保護者のあり方が、幼稚園全体の評価を左右する」と言っても過言ではありません。園の評価もしくは評判が悪くなれば、遠からず、教育の質は低下していきます。何故ならば、「教育の質」は、その環境を構成する人々の質によって決まってしまうものだからです。そのことを重視し、「保護者マナーの向上」を取り上げられた園運営協議会委員の皆さまの見識に、私は深く敬意を表したいと思います。

念のため申し上げておきますが、私は、園の評価基準を保護者に押し付けるつもりなど、毛頭ありません。 幼稚園評価の第一義は、あくまでも教育内容の質と量にかかっているのですから、その任を担う教師集団のあり方が問われることは、至極当然のことであります。とりわけ、園長の責任が最も重いことは百も承知しており、園務全般にわたる研鑽を、自らに課す毎日でございます。        

ただ折に触れ、私が繰り返し皆さまにお伝えしているのは、保護者と保育者とが心を一つにして、「園児を育成する」という最大かつ共通の目標に向けて、より良い園づくりをしてまいりましょう、そして、園のためにならないことは慎みましょう、ということなのです。ご理解いただけますよね。我々は、子どもを共に育て、互いに育ち合う“チーム佼成”の大切な同志なのですから…。

最後に、最新情報を一つ。「どんなママが大好き?」という問いかけに対する貴重な回答です。情報源は、 学者や評論家の講演や著作ではありません。年中組のI君のお答え、「いつもニコニコのママ!」。私は、子どもたちの代表の声と受け止めていますが、これほどシンプルでインパクトをもった“幼年の主張”があるでしょうか!子どもたちの大好きなママになりたくてもなれない私(?)は、引き続き、超ニコニコの園長先生を目指して頑張ります。応援してください!

  松森憲二拝

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