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園長の「給田だより」(2016年5月号)

2016/05/30 6:30:03

「“礼”をもって“道”を歩む」  ~「言葉遣いが良くなる」ために!~

佼成学園幼稚園の「三種の神器」が「園舎・園庭・温水プール」ならば、「入園三大メリット」が「人に優しくなる・足が速くなる・お手伝いが好きになる」であることは、保護者の皆さまには周知のことと思います。「三大メリット」に対する私の確信は、年を追うごとに深まっています。

実は、私の秘めたる思いの中には、声を大にして言いたい四つ目の「メリット」があります。それは、「言葉遣いが良くなる」です。しかし、なかなかアピールできないまま、5年目の春を迎えてしまいました。というのも、理想と現実とのギャップを感じることが、時折あるからです。

某小学校の先生方との交流の際、「佼成のお子さんたちの言葉遣いはいいですよね。少なくとも、 “バカヤロー”とか“おまえなんか死んじまえー”という言葉は聞きませんから…。他の園から来る子の中には、そういう子もいるんですよ」と言われたことがあります。もちろん嬉しい話には違い ありません。しかし、普段の状況からして、はたして「言葉遣いが良くなる」と言い切れるかというと、残念ながら自信がない、というのが正直な心境でした。「でした」ということは、お察しのとおり、今はそうではない、ということです。安心してください!今年は違いますよ! 「言葉遣いが良くなる」というメッセージを発したい気持ちを大きく膨らませてくれた二つのエピソードを、皆さまにご紹介いたします。

一つ目は、「園児との“掛け合い”」です。佼成学園幼稚園には、何かを始めるときの「よ~いはいいですか?」「よ~いはいいですよ!」という “掛け合い”があります。それによって子ども  たちには、静かにしようとする心構えができ、集中力を高めるきっかけにもなる、“佼成保育”の良き伝統の一つと言えましょう。

ところで、ある日、某女性タレントがMCの男性アイドル二人と幼稚園を訪問し、そこで保育体験をするというテレビ番組を見ながら、私は ふと、オリジナルの“掛け合い”を思いついてしまいました。「な~んのおはなししようかな?」と「えんちょうせんせい、ごじゆうに!」の組み合わせです。3月のお誕生会で早速試行してみたところ、子どもたちはすぐに覚えてくれました。そこで、大胆にも卒園式の話の中で、何の前触れもなく「な~んのおはなし、しようかな?」と切り出したところ、卒園児たちは絶妙のタイミングで「えんちょうせんせい、ごじゆうに!」と答えてくれました。初めて耳にするご家族からは、若干のざわめきとかすかな笑い声が起こりました。無理もありません。嬉しかったのは、卒園式後のある方(卒園児の祖母のお一人)からの声でした。この掛け合いを評価してくださり、「孫たちが “ごじゆうに”という丁寧な言葉遣いを教えてもらえたことが有り難い」と喜んでくださっている、というのです。望外のことでした。

二つ目は、「4月14日の朝の出来事」です。この日、玄関である方(?)から、「これからも、みんなのことを、よろしくおねがいします」という丁寧なご挨拶をいただきました。そのある方とは…?何とその声の主は、1週間前の4月8日に入園したばかりの、年少男児S君だったのです!もちろん、お家で教えてもらったのだろう、ということは容易に想像できます。ただ、現場にいた私が証言できることは、彼には全く“言わされている感”がなかった、ということです。それどころか、むしろ“身についている感”さえも漂っていました。その言葉は、TPOに相応しく、しかも心がこもっていて、私が思わず「はい、かしこまりました」と言いたくなるような丁寧さをもっていました。私は、良い意味でのそら恐ろしさを覚えるとともに、「鍛え甲斐がある子が入園してきたなあ」との思いを強くしたのです。

言うまでもなく、子どもたちの身体をつくるのは「食べ物」です。食べ物が身体をつくり、健康を保ってくれます。ならば、子どもたちの心をつくるのは、一体何でしょう?それは、「言葉」です。言葉こそが心を養い、生き抜く力を身につけてくれるのです。私は、かしこまった言葉遣いがすべて良い、と言うつもりは毛頭ありません。フランクな会話が、日常生活での潤滑油となることを承知しています。ただし、いざというときの言葉遣いに、その人の人格が表れる、ということを踏まえるならば、幼いころから良い言葉遣いを身につけさせてあげたい、というのが私の願いです。できるできないは、二の次です。良い言葉遣いのための環境づくりこそ、大人の大事な役割だと思います。ややもすると、大人の「言葉の乱れ」が、子どもの「言葉の乱れ」を惹き起こし、ひいては子どもの「心の乱れ」まで招いてしまいます。

知人で元警視庁剣道師範のI氏が、ある冊子の中で、「“感謝”を忘れず“努力”する剣道は、相手を打つことで強くなる。だから相手に「感謝」と「敬意」を払って胴着を整え、礼に始まり、礼に終わるのだ」と述べていました。私たち保育者は、いわばより良き保育者となるための「保育道」を、保護者の皆さまも、より良き保護者となるための「子育て道」を、ともに歩んでいるはずです。稽古相手は、目の前の子どもたち。「言葉遣い」においても、私たち大人は、「礼」をもって対峙していかなければなりません。間違っても、怒声や暴言などで、宝物である子どもたちの心を傷つけることがあってはなりません!

松森憲二拝

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