園長の「給田だより」(2017年6月号)
2017/06/01 6:35:40
「したい幼児教育、したくない幼児教育」 ~教育の極致は、「今日育」!~
「脅育」、それは5月11日の午後、私の造語集『憲辞苑』に新しく仲間入りした熟語です。その新語の誕生は、さらに多くの造語を誕生させる引き金になりました。今号は、それらの経緯、さらには「幼児教育」のあり方についてのお話です。
事の発端は、お迎えのときの駐輪場での一コマでした。ママの手を離れバス駐車場内をウロウロしているA君に、私は「ママと手をつないで、お帰りの支度をしてくださぁ~い」と呼びかけました。すると、A君の様子を見兼ねたBちゃんのママが、少し強めのタッチで「園長先生怖いよ~」と言いました。お母さま同士の信頼関係が前提にあってこそのこととは言え、他人の子どもを叱ることが見られなくなった昨今において、希少価値のある場面に遭遇した、との思いがいたしました。
しかし一方で、「このままスルーはできないな」という思いも湧いてきました。というのも、以前にも似たようなケースが何度かあり、その都度「ほら、園長先生、怒っているよ!」という脅迫(?)めいたアプローチが、子どもたちに対して繰り返されていたことに、強い問題意識を持っていたからです。何の罪もない警察官(おまわりさん)が、知らない間に怖い人にされてしまっている、という例のパターンです。私は、このときとばかりに、すかさず「園長先生は、怖くないよ~」と言いました。すると、私が怒っていないことを百も承知のBちゃんのママは、即座に「(園長先生を)脅しにつかっちゃってごめんなさい」との一言。「以心伝心」を目の当たりにした思いでした。
私は、自身が悪者になることを嫌がっているのではありません。教育的見地から必然性・必要性があるならば、いつでも「怖い人」になる覚悟はできています。しかし、幼年期の素直で柔らかい心に、「誰かに怒られるから~しない」という行動規範を植え付けたくない、というのが私の本意なのです。子ども自らが気づき、良い習慣が身に付くような「自律心や自立心を育てる教育」を追求したいと願っております。Bちゃんのママの一言が、「教育の本質」を呼び起こしてくれました。
「脅育」の誕生は、その後の多くの連想に拍車をかけました。新語群を、「したい幼児教育」と「したくない幼児教育」に大別したのが、以下の二つの表です。「共育」はともかく、その他は見慣れない熟語ばかりです。いずれも読みは「きょういく」です。特に、「したくない幼児教育」は、常に自戒しなければならないと思っております。
☆九つの「したい幼児教育」(順不同)
| No | 種 類 | 定 義 | 
| ① | 共 育 | 教える人、教えられる人が共に学び合い、成長し合える教育 | 
| ② | 協 育 | 教える人、教えられる人の心が互いに通い合い、支え合う教育 | 
| ③ | 響 育 | 互いの心が響き合う、感動に満ちた教育 | 
| ④ | 興 育 | 興味や好奇心を大切にし、楽しさを主眼とする教育 | 
| ⑤ | 交 育 | 人と人との交わりを促し、出会いの喜びを感じられる教育 | 
| ⑥ | 恭 育 | 人を尊重する心を養い、礼儀正しさを身に付ける教育 | 
| ⑦ | 敬 育 | 他人への謙虚さや優しさを、人間関係の基礎とする教育 | 
| ⑧ | 鏡 育 
 | 「人のふり見て我がふり直す」姿勢に徹する教育 | 
| ⑨ | 郷 育 
 | ふるさとにいるような安心感を与える教育 | 
★九つの「したくない幼児教育」(順不同)
| No | 種 類 | 定 義 | 
| ① | 脅 育 
 | 脅迫的な手段により、言うことを聞かせる教育 | 
| ② | 恐 育 
 | 損得計算や交換条件によって、恐怖心を抱かせる教育 | 
| ③ | 強 育 | 権力にものを言わせて、無理強いする教育 | 
| ④ | 競 育 | 競争心を煽り立てたり、人の弱みに付け入る教育 | 
| ⑤ | 叫 育 
 | 大きい声を出して威嚇し、人を委縮させる教育 | 
| ⑥ | 狂 育 
 | 間違った考え方、偏った考え方に基づく教育 | 
| ⑦ | 凶 育 | 縁起でもないことや不吉な情報で誘導する教育 | 
| ⑧ | 驚 育 | 人の目を引くことが中心の、本質からかけ離れた教育 | 
| ⑨ | 驕 育 | 驕り高ぶっていることに気づかない、人を見下すような教育 | 
ここまで書いてきて、はたと気づきました。“一期一会”“二度とない人生”“一日は一生の縮図”“今でしょ!”などの格言・至言は、どれもこれも「今日育」、すなわち「今日の自分を育てる教育」の大切さを物語っているのではないだろうか、と。
また、「今日育」は、「今日生く」(今日を生きる)にも通じます。それを“教育の極致”と表現するのは、いささかオーバーでしょうか。
松森憲二拝
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