トピックス

園長の「給田だより」(2017年7・8月号)

2017/07/01 6:27:37

「“ア~イウ~エオ~!”」  ~ アイサツマンは行く! ~

6月8日の歯科検診の日、順番待ちをする子どもたちを前に紙芝居をするチャンスに恵まれました。演目は「アンパンマン」。初見でしたが、何とか子どもたちに喜んでもらおうと、役柄になりきって…。1本目が終わるや否や、「次、それ~」とのリクエストがあり、短い時間ながらも、「アンパンマン」を3本。子どもたちの反応メーターが高かったのは、バイキンマンが登場するときや喜んでいるときの、「ハ~ヒフ~ヘホ~!」でした。

紙芝居が終わり園長室に戻り、ふと脳裏をかすめたのが、「ア~イウ~エオ~!」です。それは、普段私が、子どもたちや保護者・保育者との関わりの中で、私なりに心がけていることの頭文字を並べたものでした。一文字ずつにコメントを…。

いさつ(挨拶)

私は子どもたちと、三つの約束をしています。それは、「あいさつ」「げんき」「おてつだい」です。子どもたちに求めるだけでなく、もちろん私自身にも言い聞かせている実践課題です。中でも、最初の「あいさつ」については、「園長が口を開けば、いつも『あいさつ』と言っている」とお思いの方も、少なからずいらっしゃることでしょう。63歳になった今、「あいさつ教の教主(?)」を自任するほどまでになった背景には、二つのことがあったことに気づかされます。一つは、「仏さまの教え」であり、もう一つは、「教育者の教え」です。

一つ目の「仏さまの教え」。何か小難しそうに伝わるかもしれません。しかし、私はそれを至ってシンプルに、「人間の生き方の教え=ご縁を大切に生きる教え」と捉えています。平たく言えば、「目の前の出会いを大切に生きていくこと」ということです。いかにも抽象的なこれらの表現を、より具体的に(より実践的に)表現するにはどうしたらいいのだろうと考えていたある時、その答えが見つかりました。それは、「あいさつをすること」だったのです。その時以来私は、「自分から先に、相手の目を見て、できるだけ明るい声であいさつをすること」を、生きる上でのモットーとするようになりました。(もちろんその時々の心境に左右され、上手くはいかないこともあるのですが…)。

もう一つの「教育者の教え」について。私は、まだ若かりし頃、恩師でもある庭野日鑛先生(佼成学園学園長)のご薫陶を受け、あるお二人の教育者の言葉に触れることができました。ともに故人ながら、教育の世界では知る人ぞ知る、森(のぶ)(ぞう)先生と徳永康起(やすおき)先生です。園長室の机の引き出しに入っているのは、お二人の珠玉の言葉が集められている二冊の小冊子。その宝物には、教育者としての心構えのエッセンスがたくさん詰まっており、中でも「あいさつ」に関する記述には、大きなインパクトを受けました。次の二つの言葉です。

〇「朝のアイサツは人より先に‼」これを一生続けることは、人間としての最低の義務。(森信三先生)

〇アイサツひとつに命をかけるほどの行がなくては 教育の底は浅い。(徳永康起先生)

対象年齢の違いはあっても、教育畑一筋に歩んできた私にとって、生涯を支えてくれている至言である、と言っても過言ではありません。

毎朝、園の玄関での、約1時間10分の「立礼」の行は、一人ひとりの子どもたちとの大切なコミュニケーションです。一人の人間として尊重している、つまり「あなたを大切に思っているよ」の気持ちが伝わるように、子どもたちの目を見て、できる限り丁寧な言葉でのあいさつを心がけています。子どもたちの中には、私より先に「園長先生、おはようございます」と言ってくれる子もたくさんいます。そのときには、言葉をさえぎることなく最後まで聞き取り、その後で「〇〇くん(ちゃん)、おはようございます」と返しています。

私のモチベーションを高めてくれるキーワードが、剣道の「一本」です。剣道では、有効な打突が相手より先に入らなければ「一本」にはなりません。いくら強く打ち込んでも、後からではダメです。挨拶も同じこと。相手の存在が目に入ったら、まず先にこちらから挨拶する。「おはようございます」「こんにちは」「お疲れさま」「さようなら」の一本!味わえるすがすがしさは、他の誰のものでもありません。自分自身のものなのです。相手から返事が返ってくるかどうかは、二の次、三の次のこと。こちらから挨拶すると、普通は、相手から返礼の挨拶があるものですが、中には、無反応の人がたまにいます。(実際には、無反応という反応なのでしょうが…。)そんなときには、やや悲しい思いにもなってしまいます。しかし、挨拶を止めたならば、こちらから試合を放棄することになりますから、それは避けなければなりません。「継続は力なり!」というではありませんか。

のち(生命)

毎年、年長組4月、5月の誕生会では必ず、佼成学園幼稚園の園名になぞらえて、「いのち」の大切さを伝えるようにしています。「こ・う・せ・い」、すなわち、「のよに」「んでいただいた」「かいでたったひとつの」「のち」です。ご両親と出会え喜んでもらえたこと、一人ひとりは大切な存在であるから仲良くしていくこと、などが伝わればいいな、と強く願っております。

ここのところ、私自身の園児を眺める目線に、変化が起きていることを自覚しています。もちろん、園長目線であることに何ら変わりはないのですが、やや「じぃじ目線」が加わってきているな、と感じています。5月に2歳を迎えた初孫が、園児たちを眺める目線に、質的な変化をもたらしてくれたのだと思います。園児たち一人ひとりの ことが、以前よりもさらに可愛くなりました。

 た(歌)

ある日の通勤途中、通りすがりの見知らぬお母さんが、幼児に歌を教えていました。その子に相応しい童謡を口ずさみながら、生きることの楽しさや喜びを、歌に託して伝えている姿に映りました。考えてみれば、子どもたちが生まれて初めて出会う音楽の先生は、間違いなくお母さんです。

no-music no-sports no-life(音楽、スポーツのない人生はない)、これは私の次男のかつてのメルアドですが、私の心境に近いものがあります。一口に音楽と言っても、「楽器」はどれもこれも中途半端ですので、私にとっての音楽の中軸は、「歌」ということになるでしょう。気が付けば、知らず知らずのうちに「歌」を口ずさんでいる自分がいます。人生の応援歌であったり、ときには鎮魂歌であったり…。そばに歌があるかどうかが、人生における心の豊かさを左右すると思います。

ところで、「歌のおじいさん♪」は耳慣れぬジャンル(?)だと思います。チャンスがあれば、手を挙げて、ぜひ挑戦したいと思っています。どなたかそんな情報をお持ちでしたら、園長室までお知らせください。ご連絡をお待ちしております

がお(笑顔)

昨年度の後援会役員の皆さまから、今年度の初め、デコレーション付きの色紙(寄せ書き)をいただきました。そこに書かれていたメッセージ。「はじめは不安と緊張の中でスタートしましたが、園長先生のやさしい微笑みのおかげで、和やかに仲間たちと協力し合い楽しい活動になりました。」「笑顔♡温かい言葉をかけていただきありがとうございました。」社交辞令でも嬉しいものです。

「顔は親の責任、表情は本人の責任」という言葉があります。若干の言葉を補うならば、「顔(のつくり)は親の責任、表情(の明暗)は本人の責任」ということなのでしょう。表情で求められるものの代表が「笑顔」。各自の心がけ次第なのでしょうね。私自身が意識していることと言えば、ニコッとする、というよりは、優しい眼差しを相手に注いでいく、ということかもしれません。

笑顔は、「いま」「ここ」「あなたと私」を受け入れてこその、人間の貴い営み(肯定的態度)。笑顔は、その人自身の人格の表れです。とは言え、「形から入る」のも大切なことですから、「笑顔」になれる努力を、今後も続けていきたいと思います。

20年ほど前、ある講演会の企画に携わり、直接お目にかかったことのあるノートルダム清心学園の渡辺和子先生。(残念ながら、昨年の12月30日に、89歳でお亡くなりになりました。)私は、教育者としての視点から、また宗教者の視点から、数多くのことを学ばせていただきました。先生のご著書にたびたび引用されている次の詩は、笑顔(ほほえみ)に関する教訓として、私の心に確かに刻まれております。

もしあなたが、誰かに期待した

  ほほえみが得られなかったら

不愉快になる代わりに あなたの方から

  ほほえみかけてごらんなさい

実際、ほほえみを忘れた人ほど

  あなたからのそれを

必要としている人はいないのだから

ところで、宝塚歌劇団の舞台裏には、『ブス25箇条』という張り紙があるそうです。それはもちろん、そうあってはならない、との戒めの文書に違いないのですが、3番目の「おいしいと言わない」、2番目の「お礼を言わない」を抑えて、堂々の1番目は「笑顔がない」だそうです。それほどまでに重要視されている「笑顔」。実際には、そう簡単なものではないからこそ、タカラジェンヌたちの“いの一番”の目標なのでしょうね。

もいやり(思いやり)

 「思いやり」、よく耳にする言葉ですね。これは、人間が幸せになるための黄金律(ゴールデンルール)です。私は、「相手の立場に立つ」と言い換えています。人が互いに言葉を交わすその奥には、予め何らかの期待や信頼が込められています。ですから、相手の「気持ちを受容」し、「期待を想像」し、「立場を配慮」することが大切なのです。もし仮に、状況によって期待に応えられないことがあっても、断り方によって信頼を裏切ることのないよう、十分な気配りをしなければなりません。

 「ア~イウ~エオ~!」を造語集『()辞苑』に加え、大いに活用してまいります。ニューキャラクター、アイサツマンは行くのです!

松森憲二拝

« 緊急情報 | メイン | 七夕飾り »