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園長の「給田だより」(2017年9月号)

2017/09/01 7:52:58

「私の“夏季研修ミニレポート”」   ~さあみんな、二学期が始まるよ!~

夏休み、それは子どもたちや保護者の皆さまにとって、長い一年間を乗り切るための大切な充電期間であると思います。親子での濃密な触れ合い、そして夏休みならでは貴重な体験などが、いよいよ始まる“充実の二学期”をより輝かせてくれることでしょう。子どもたちの“心の宝石箱”には、きっとたくさんの宝物が詰まっているはず。キラキラした瞳で語ってくれるワクワクトークに、心躍らせながら、全力で耳を傾けるつもりです。

ところで、保育者にとっての夏休みと言えば?幼児理解や保育者自身のメンタル&スキル向上のための貴重な研修期間、と位置付けることができます。夏休み期間中には、数多くの団体が、保育者向けのさまざまな研修会を各地で開催します。例年、我が園の保育者たちも、大切な子どもたちとの有意義な時間を創出するため、各自の問題意識に基づき、自己の研鑽・啓発に努めています。

今夏私も、二つの研修会に参加しました。一つは、東京家庭教育研究所主催の「家庭教育公開講座」。幼稚園に課せられた社会的使命の一つが「子育て支援」である、という観点からして、家庭教育に無関心ではいられません。昨年に続き二回目の参加です。「心に響く ほめ方 叱り方」が、今年のテーマでした。家庭を幼稚園に置き換えれば、保育者にとっても有益なヒント満載で、保育現場の方々の姿も多く見受けられました。       

もう一つは、フレーベル館主催の「エグゼクティブセミナー」。講師陣が著名な研究者、脚本家、スポーツキャスターである、ということもあり、いささかミーハー的な参加動機ではありましたが、「いまどきの子育てで大切なこと」「選ばれ続けるリーダーの条件」「創造を語る」「ディズニーの現場力」という厳選された4テーマは、いずれも聞き応えあるものばかりでした。「夏季研修」をとおして学び得た数多くの事柄の中から、いくつかをピックアップして、紙上レポートいたします。

一点目は、「家庭教育公開講座」で耳にした、子どもをほめるポイントの一つ、「結果だけで評価せず、子どもが努力したと認められる行動に対しては、努力した心、努力した精神を認めてあげることが大切です」というフレーズです。子どもにしろ大人にしろ、結果にこだわりたくなるのは仕方ありません。しかし、大人の関心が結果に偏り過ぎてしまうと、結果が望ましくないときには、たちまち子どものやる気は減退し、次への意欲につながりにくくなります。「“ほめる”とは、子どもが持続して行動できるように励ますこと」。大人は努めて子どもの心の動きに注目し、頑張っている姿勢にこそ焦点を当てるべきなのですね。常に、心しなければならないと思います。  

二点目は、「エグゼクティブセミナー」で、脚本家三谷幸喜氏のコメントに共感を覚えたことです。三谷氏は、作・演出として『子供の事情』という演劇作品に取り組んでいて、そのお芝居ではそうそうたる俳優陣が10歳の子どもを演じているそうです。演出家として発信した俳優たちへのメッセージは、「『自分は子供じゃないんだ』という意識で演じてください」。大人が子どもの役を演じるのですから、一般的には「子どもになりきって」となるのでしょうが、「子どもじゃない意識で」という三谷氏の発想に、思わず「合点!」し、さすがに「子ども目線」をよく理解しているな、と感じました。以前に『給田だより』でも述べたとおり、子どもたちは、自身を決して「半人前」とは考えておらず、それぞれの年齢なりに自身を「一人前」として見つめているのです。そのことを、思い起こすことができました。よく聴いてみると、三谷氏には現在3歳の男の子がいて、「子どもができてからは、以前には考えられなかった新しい世界が目の前で展開し、何かと試行錯誤の連続」とのこと。これはあくまでも私の臆測に過ぎないのですが、「目の前の我が子と触れ合うには、一人前として扱わなければ、真実の姿をとらえることはできないぞ。より良いコミュニケーションをとることはできないぞ」と、感じているのではないでしょうか。「当たらずといえども遠からず」かな?

卑近な例で恐縮ですが、つい先日、移動中の車の後部座席に座っていた私が、助手席(チャイルドシート)の孫の顔を覗き込もうとして少し腰を浮かせたところ、彼女からの一言、「座っててね」。きっと、親からも言われたことがあるのでしょう。その場にマッチした言葉の選択に、私は唖然として、思わず「ハイッ!」と返事。2歳3か月ながらも、本人の意識は、立派に「一人前」なのです。

「物事の結果のみに執着せず、各自の努力する姿勢こそを大切にし、“一人前”の人として接していく」。愛しい子どもたちとの向き合い方を、「夏季研修」が再確認してくれました。

 松森憲二拝

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