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園長の「給田だより」(2019年4月号)

2019/04/13 13:31:00

「園長、『ギュッと抱きしめて』を歌う!」  新元号の始まりに思うこと

去る3月15日、平成最後の卒園式を無事に終えることができました。133名の園児が佼成学園幼稚園を旅立ち、卒園児の累計総数は11,003名を数えることとなりました。

 私は、卒園式の「園長先生のお話」の中で初めて、ある歌を歌いました。ある歌とは、『ギュっと抱きしめて』というオリジナル曲。卒園児の保護者に事前配付したプリントには、以下の「歌詞」と「作者のことば」を掲載しました。

ママの歌

ギュッと抱きしめて

作詞・作曲  給田 育(やす)孝(たか)

編曲・伴奏  田口 樹(な)菜(な)

(平成30年度卒園児保護者)

 

あなたに出会った あの日から

思いはずっと 変わらない

あなたのいのちは 私のいのち

ギュッと抱きしめて ほほえみかわす

 

あなたの心が 見えなくて

悔しい日々も あるけれど

あなたの願いは 私の願い

ギュッと抱きしめて 涙をぬぐう

 

あなたの輝き まぶしくて

後ろ姿が 誇らしい

あなたの未来は 私の未来

ギュッと抱きしめて 幸せ祈る

 

ギュッと抱きしめて 幸せ祈る

 

 

〈作者のことば〉

平成24年3月19日、園では職員対象の「安全教育セミナー」が開かれました。園長就任前ながら、私は一日も早く佼成学園幼稚園の空気に触れたいと、自ら参加を願い出ました。数日後、その受講メモを見直していたときに、ふと、あるフレーズに目が留まりました。それが、「ギュッと抱きしめて」です。そして、図らずも歌詞とメロディーが同時に浮かんできて、何度か繰り返し口ずさむうちに、『ママの歌 ギュッと抱きしめて』はできあがりました。今振り返ってみると、新米園長としてスタートしようとしている私に、仏さまが「子育て」「幼児教育」の肝心(かんじん)要(かなめ)を示唆してくださったのだ、と思われてなりません。

あれから丸七年、この曲のサブタイトルにある“ママ”とは、単に母親のことだけではなく、広義の母親、つまり「母性」のことを指しているのではないか、と強く感じています。

子育てには、「父性的関わり」と「母性的関わり」の両方が求められます。しかし、「重要なのはバランスではなく、プライオリティー(優先順位)である」とは、私の私淑する児童精神科医の弁です。幼児期に必要なのは、徹底した「母性的関わり」だと言うのです。それは、父親とて同じことです。「母性的関わり」によって、保護者(もしくは養育者)との間に十分な信頼関係が築かれてこそ、その後出番がやってくる 「父性的関わり」が活(い)きてくるのです。後になって、「子どもたちの自己肯定感の低さ」を嘆く前に、我々大人は、まず目の前の幼児期の子どもたちに、全力で「母性的関わり」を心がけなければならないのです。自己肯定感を高める努力も、大切なことには違いありません。しかし、それよりももっと重要なのは、子どもたちが生まれながらにして持っている、自己肯定感そのものを傷つけないことではないでしょうか。幼児期の「ギュッと抱きしめて」は、子どもたちの「自分は確かに愛されている」という実感を支えるものであり、その安心感はやがて、世間の荒波を乗り越えていく上でのかけがえのない「安全基地」「発進基地」となっていくのです。

 父母(ちちはは)の “ギュッと”の力 子を生かす   合掌

平成31年3月15日

給田育孝 こと 松森憲二拝

 『ギュッと抱きしめて』は、「作者のことば」にあるように、実は7年前にできあがっていたのです。しかし、私自身には譜面を起こす技量もなく、また発表する機会もありませんでしたので、その存在はパソコンデータ内の歌詞カードと、頭の中のメロディーボックス内のみに…。数年後、今回の卒園児たちが入園して間もなくのころ、編曲をお願いしたいと思う方との出会いがありました。田口さんはすぐに原案を作ってくださったのですが、私の怠慢でずっと放置したままに。田口さんのご長男が今年の卒園児であることから、ぜひピアノ伴奏をと願い、最終譜を完成させることにしました。諸般の事情で生伴奏は叶いませんでしたが、田口さんに音源制作を依頼し、それをバックに歌うことにしたのです。

田口さんの編曲でブラシュアップされた『ギュッと抱きしめて』は、何とも言えぬ優しさに溢れていました。特に前奏のメロディーに。その音色に魅せられた私は、本番までに何度口ずさんだことでしょう。我が家ではもちろんのこと、行き帰りの路上ライブ(?)。歩きながらのことですから、かなり「変なおじさん」になっていたはずです。でも、大事な卒園式でのメッセージソング。いい加減にお茶を濁すようでは、仏さまに顔向けできません。いざ、本番…。

 式後に、保護者の皆さまからいくつかのメールをいただきました。Aさんからは、「卒園式での、園長先生の独唱、素敵でした。年少組の頃、田口さんから園長先生の曲を楽譜に起こしているとちらりと聞いたのですが、あれから時が経ち、まさか卒園の日にご披露頂けるとは!ビッグサプライズでした!園長先生の思いが込められた歌、心に染み渡りました」と。また、Bさんからは、「園長先生の素晴らしい歌の2番目で、堰を切ったように涙が溢れました」とのこと。

自分で自分にプレッシャーをかけて臨んだ今年の卒園式、今はチャレンジして良かったな、と思っています。それは、決して歌を褒められたからではありません。私が伝えたかった“ギュッと抱きしめて”の精神(こころ)を、多くの保護者の皆さまと共有できた、と感じているからです。

以下のCさんのメールからは、Cさんとお母さまとの絆(きずな)の深さに、強く心を打たれました。

卒園式、子どもの成長に感動しました。園長先生の歌、とてもステキでした!園長先生の歌を聴きながら、2年前に亡くなった母の最期の言葉を思い出していました。「HやRの運動会見に行きたかった。2人のランドセル買ってあげたかった。もっと孫の成長を見たかった。なにより親になったあなたをもっともっと支えてあげたかったし、見ていたかった。子育てが大変なときにごめんね。」私に子どもができてから、すっかり孫に夢中かと思っていたけど、変わらずに私のことも想ってくれていたこと、最期まで本当に自分のことより子どもの為に生きてくれたんだと、胸がいっぱいになりました。園長先生の歌を聴きながら、私も母のように、いつまでも子どもたちのことを見守っていきたいと思っていました。

母親になったわが子を思うお母さまの気持ちに気づき、その思いに満たされたCさんは、今後、さまざまな困難が待ち受けていようとも、二人のお子さんをしっかりと抱きしめ、育てていかれるに違いありません。

3月28日、私は病院で検診を受けるため、受付機に診察券を挿入し、受付票の交付を受けました。  そこには氏名とともに年齢の記載があり、「64歳10ヶ月」とありました。前月受診した際の受付票は、もちろん「64歳9ヶ月」。受付票によるカウントアップ(?)は、前期高齢者の仲間入りが目前であることを実感させてくれました。思えば、園児たち、保護者の皆さまにも多大なご心配をおかけした昨年の3月、4月。二か月の間に二度の入院というなかなか得難い体験から、はや一年が経過してしまいました。図らずも一か月半ほど前、ほぼ3か月ごとに内科検診を受けている主治医 から、昨年3月の入院に関して、「脳幹梗塞は死に至る病気。本当に良かったですねえ」と声をかけられました。インパクトのあるコメントは、改めて「生きていること」「生かされていること」を  しみじみとかみしめる機縁となり、身の引き締まる思いがいたしました。

4月1日、待ちに待った新元号の発表がありました。「平成」から「令和」に切り替わる5月は、私の誕生月。新元号の始まりとともに、私自身も大きな節目を迎えることになります。今後の人生を見据えながら、心機一転、新しい一歩を踏み出したい、と願っています。そのテーマは、Ⅼet’s challenge! No Regret!(挑戦して、 悔いを残さない!)。乞う、ご期待! 

松森憲二拝

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