トピックス

2012年6月

園長の「給田だより」(平成24年6月号)

2012/06/01 9:00:00

触児に関する五つの戒め ~ お・い・あ・く・ま ~

 

 堀田庄三さん(旧住友銀行頭取)による新入社員向けの「人間力をつける」という話に、「おいあくま」という言葉があることはよく知られています。「怒るな」「威張るな」「焦るな」「腐るな」「負けるな」という五つの訓示の頭文字を並べたものです。

 一方、「あおいくま」という言葉も耳にします。五つの内容は同じなのですが、「焦るな」が最初に来て、順番が違っています。最近では、ものまねタレントのコロッケさんが、『母さんの「あおいくま」』という書名で出版をしたようです。いずれにせよ、人生における教訓として、多くの人々に重用されています。

 ところで、冒頭タイトルの「触児」とは、私の造語で、「園児との触れ合い」を意味します。多少仏教を意識して、「そくじ」と読むことにいたします。つまり、「触児に関する戒め」とは、私自身が「園児たちと触れ合う時の心構え」とご理解ください。ただし、松森版「おいあくま」は、「く」と「ま」が上のものとは違っています。

 自分自身に改めて言い聞かせるつもりで、一つひとつご説明いたします。

 1.       「お」…怒らない

 自分の意に反する事態に遭遇するとき、つい人間は怒ってしまいます。怒って物事が解決するなら、いくらでも怒りますが、怒るとかえって物事をこじらせるだけです。特に子どもなどは、いきなり怒られたり、その度合いがひど過ぎると、委縮して内面の気持ちを表現しなくなります。それでは何にもなりません。そこで、三つの魔法の言葉が登場します。それは、「どうしたの?」「どうして?」「どうしたいの?」です。じっと待っていれば、必ず口を開き、心を打ち明けてくれるはずです。「待つ」ことができるかどうか、なのです。ただし、危ないことをしているときや、人間として間違っていることをしているときには、話は別です。

 2.       「い」…威張らない

 こちらの意図するように物事が運ばないとき、つい上から相手を言い含めようとする心が動きます。たとえ、一時的に思いが通ったとしても、何故かこちらには、虚しさという結果が残ります。一方相手には、反発心や、どうせ言ったって仕方がないという心が芽生え、無視(いわゆる「シカト」)の姿勢を育ててしまいます。「押しつけ」という言葉がありますが、大切な「躾(しつけ)」とは、似て非なるものです。「自分から」という気持ちをいかに起こさせるかは、こちら側の課題なのです。

 3.       「あ」…焦らない

 願いが強ければ強いほど、目の前のことがうまくいかなくと、イライラとともに結果をすぐに求めてしまいます。こちらが焦れば、相手はせっかちになったり、あるいは依存傾向が強まり、いわゆる「マニュアル人間」(自主性のない人間)が育ちかねません。

 次の文は、佼成学園学園長である庭野日鑛先生のご長女庭野光祥さまのエッセイからの抜粋です。光祥さまの長女さんが、まだ小学校に入りたての頃の「漢字」に関するエピソードをとおしてのコメントです。

 娘がこれからの数年間で学ぶことは、大人になったらみんな出来るようになることばかり。親である 私が目先の結果に一喜一憂して、やる気や可能性をつぶすような言葉をかけてはいけない。子どもが壁にぶつかった時、乗り越えるような言葉を今かけること。それが親の役目なんだ。改めてそう思いました。   

 4.       「く」…比べない

 日常会話の中で、特に誰かと比べるつもりはなくても、言葉の端々に他と比較するニュアンスが出てきます。「一切の悩みは比較より生じる」という言葉もあります。兄弟姉妹との比較、隣近所との比較、「百害あって一利なし」です。比べられて嫌な思いをたくさんしてきているにも関わらず、いざとなると「わかっちゃいるけどやめられない」のが、人間の常です。言われた側は自信を無くし、卑屈な心になってしまいます。

 5.「ま」…迷わない

 「迷わない」とは、「子供の良さを信じて疑わない」ことです。この「ま」が最も大切な項目かもしれません。子どもは本当に純粋で、無邪気です。そうであるがゆえに、こちらからすると、つい勝手な行動をしているように見えてしまいます。こちらの思いと違うと、わかっているはずの「本来の良さ」が途端に見えなくなってしまいます。表面的には、たとえどんな姿を見せようとも、本来具わっているその子の特性、良さを信じていきたいと思います。「信じられている」という思いが相手に伝わった時、それは先月お伝えした「触食(そくじき)」となり、人間関係における「安心感」や「信頼感」を養っていく因(もと)になると信じます。

 

松森憲二 拝

« 2012年5月 | メイン | 2012年7月 »