神奈川県藤沢市にある湘南白百合学園中学・高等学校は、キリスト教(カトリック)の精神に基づいて中高一貫の女子教育を行っている学校です

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朝礼での先生のお話(3)

2018年1月24日 (水)

毎週水曜日は、朝礼時に各先生方が今まで体験してきたこと、感じてきたことをお話しする時間が設けてあります。1月24日に話された内容を以下に掲載します。

『おはようございます。
 一気に積もった雪が一気に解け、ちょっと残念なくらいでしょうか。わずかに残った雪のかたまりをあえて踏みしめながら登校した人も多いと思います。でも、寒さはまだまだ続くようです。
 私が小さな頃、初めて手にした本が「ゆきのひのうさこちゃん」でした。知っている人も多いと思います。うさこちゃんは、英語名ではミッフィーといい、原作のオランダ語ではナインチェといいます。
 作者はディック・ブルーナさん。偶然うさぎ年生まれだったそうですが、昨年の2月に亡くなりました。60年間ずっとオランダのユトレヒトの自分のアトリエでひとりで作品を作りました。すべて手書き、手作りです。もともとは自分の息子に作った絵本でしたが、うさこちゃんの絵本は1955年に最初に発表されました。その後、全世界で50か国語以上に翻訳され、長い間、何世代にも渡って愛されています。
 私はブルーナさんの作品が大好きなのですが、「大好き」と自覚したのは大学生になった頃でした。ブルーナさんは、うさこちゃん以外にも多くの広告デザインを作っています。広告デザインに関心があった私は、改めてみると、ブルーナ作品はデザインとしてとんでもなく完成していることに気付きました。無駄なものが何もない。シンプルなのに、気持ちを素朴に暖かくする。静かなのにとても饒舌なデザインです。読んでいる人の中の子供の部分にストレートに訴える力がとても強いのです。ありがちな「私が私が~」というアピールもない。
 この絵本には謎めいた決まり事がたくさんあります。目は点だけ、口はバッテン、でも不思議とうさこちゃんはいろんな表情をし、おしゃべりしているように見えます。そして、絵本の形はいつも決まって正方形で、お話は必ずハッピーエンドです。日本語ではわかりませんが、アルファベットはすべてが小文字で書かれています。さらに、色はブルーナカラーと呼ばれる6色しか使われません。そして、輪郭の線はよーく見ると必ず震えています。
 単にかわいいだけではない、力があり、作者の人柄も伝えたいこともかえってたくさん伝わってきます。ブルーナさんいわく、読者の子供たちが想像しやすくなるように、描いているときの気持ちがそのまま伝わるように、心をこめて描くと、線もゆれ、口もバッテンになり、絵も極限までシンプルになるとのこと。色も試行錯誤の末、選びに選んだそうです。
 相手の想像の余地をたっぷり残しながら、心をこめて作りあげると、言葉も絵も、静かだけれど饒舌、そして長く心に残ります。
 いまは、言葉も音も色も高速でたくさん通り過ぎる騒がしい時代です。ですが、その騒がしさに人々は少し疲れ、静かなもの、ゆっくりなものが少しずつ見直されています。
 あなたの言葉は、書く文字は、相手の想像の余地をたっぷり残していますか。心が込められていますか。あなたの周りの言葉や絵にも、静かだけれど実はおしゃべりな暖かいものが
 たくさんあるはずです。寒い冬の日には、そういうものをことさら大事にしてみてください。
 今日もよい一日を。 以上で終わります。』

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